東北ブナ紀行(41 奥田 博

 山形県小国町はブナで町興しをはかっている。その位、ブナのいい山が多くある。町には山に登らなくてもブナを見ることの出来る森がいくつかある。前回紹介した「温身平」もそのひとつ。今回は、山のブナと遊歩道からのブナの二ヶ所を紹介したい。

80)祝瓶山

祝瓶山は鋭い三角形の山頂が、どこからでも目に付く。朝日連峰南端の山であり、縦走の出発点・終点の山でもある。ブナだけを鑑賞するなら、本格的な登りになる尾根の取り付きまででも楽しめよう。

登山は荒川に架かる吊橋で始まる。対岸に渡り、しばらく歩を進め大石沢小屋を過ぎるとブナ原生林の中へと入って行く。200年モノの太いブナも見られる。雰囲気がもっとも良いのは、尾根の取り付き付近。この辺は、粒揃いのブナ林で見ごたえある。ブナを写真に収めながら歩くのは楽しいが、尾根に取り付くといきなりの急斜面で、一気に汗を絞られる。苦しさが頂点に達した頃に、鈴出の清水が現れた。ザックを降ろして、沢まで降りてブナの恵みである冷たい水をいただいた。この上も、白い幹の若いブナの森が続いた。さらに登れば、ブナも次第に矮小化して太いブナは見当たらなくなる。やがて展望の尾根に出れば山頂は目の前だ。登山口から山頂までブナの変化が楽しめる。

コースタイム:登山口(30分)尾根取り付き(30分)鈴出の水(2時間30分)山頂

 

 
祝瓶山のブナ

 
祝瓶山

81)横根健康の森

横根山の南側に町営のキャンプ場「横根健康の森」が造られている。テント場やバンガローがあり、そこから遊歩道が整備されてブナ林を鑑賞できる。町が「白い森」と称する通りここのは、幹が白いブナ林が特徴だ。比較的乾燥して、コケが付着しないのであろう。それだけに明るいブナ林の印象が強い。

キャンプ場を抜けて最初は古い街道で「石畳の旧峠路」と呼ばれる道から歩き始める。杉林の中を抜けると、石畳が現れるが、苔むして滑る。やがて聖観音が祀られている峠に差し掛かった。急な斜面を越えると尾根道となり少し展望が得られる。やがて美しいブナ林の中を歩くようになる。比較的若いブナなのは、すぐ脇を林道が通っているので、伐採されたのかも知れない。二次林で、未来の森とでも呼べそうだ。林道を進むと二つの展望台となる。最初が朝日連峰で、後が飯豊連峰がよく望まれる。車道を少し戻って、ブナ林遊歩道へと入ると、白いブナの二次林が広がる。林床にはユキツバキの濃い緑が広がり、典型的な雪国のブナ林だ。下るに従って白くて太いブナも見られるようになる。そんなブナを眺めながら下ると、キャンプ場へと戻った。

コースタイム:キャンプ場登山口(20分)聖観音(20分)朝日展望台(45分)キャンプ場登山口

  

 
横根健康の森の白いブナ

 


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