東北ブナ紀行(34 奥田 博

 山形県に入ったブナ紀行だが、大きな抜けに気付いた。秋田駒ヶ岳の連峰・烏帽子岳(乳頭山)と岩手の盟主岩手山。行ったり来たりで、なかなか南下できない。秋田駒周辺は、今までも何度か紹介しているが、乳頭山は乳頭温泉周辺と岩手県側の滝の上温泉周辺のいずれも登山口付近がいい。岩手山も山麓にしかブナはない。網張温泉の東側の尾根を冬にたどったことがあるが、ここもブナが残されているが、今回は柳沢登山口からの登山者誰もが目にするブナです。

66)烏帽子岳(乳頭山)

乳頭温泉郷と呼ばれる一帯は、いい温泉に囲まれている。大釜温泉、蟹場温泉、孫六温泉、黒湯温泉など、それぞれに個性に富んだ温泉である。乳頭山には孫六温泉の脇に登山口がある。登り始めると、すぐにブナ林が現れる。ブナだけを鑑賞するなら、10分も登れば十分だろう。この一帯のブナは、多雪地帯であるので雪の影響を大きく受けている。さらに古くから、木地師や薪炭材として伐られていたので、細いブナと太いブナが混生している。それだけに母樹として残したブナは素晴らしい。

山頂は、長いブナ帯を抜けると花の咲く田代平湿原。ここからは展望の得られる斜面をたどる。烏帽子という名前がうなずける急斜面を登れば360度の大展望の山頂となる。なお、滝ノ上温泉側に下っても、登山口近くはブナがいいし、烏帽子岳から千沼ヶ原を経て下る途中の平ヶ倉沼周辺は、ブナに囲まれた聖地である。
  コースタイム:乳頭温泉(10分)ブナ林(1時間30分)乳頭山(3時間)滝ノ上温泉


登山口付近の見事なブナ

67)岩手山

  岩手山は大きな独立峰で、典型的なコニーデ型火山。岩手山中腹にもブナが広がっているが、火山の影響もあって、美しい裾野一面に広がっている訳ではない。あるところが溶岩流であったり、深い谷であったり、スキー場で皆伐されたりとさまざま。この柳沢口は、岩手山登山の中では最もポピュラーなコースだろう。このコースには、登山口からはミズナラ林だが、少し入るとブナ林となる。しかし2時間も歩けば、もうブナ帯を抜けて森林限界になってしまう。この周辺のブナはマダラ状に広がっているのは、人の影響ではなく恐らく火山の影響を受けているからだろうか。それだけに貴重な存在であると思う。

 冒頭にも書いたが、網張温泉の東側の尾根(旧岩手高原スキー場上部)のブナは、その東隣の御神坂コースをたどっていないので、そこを歩いてから紹介したい。

 コースタイム:馬帰し(1時間)新旧道分岐ブナ(2時間30分)八合目小屋(40分)山頂


火山礫の上、僅かな土に根を張ったブナ


烏帽子山


岩手山


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