東北ブナ紀行(33 奥田 博

 奥羽山脈は山形県北部で標高を落とす。奥羽山脈ではもっとも低い標高となり千bを切る山がしばらく連なる。そんな中に翁山や奥羽山などのブナの山が点在していた。

64)翁山

翁峠とも呼ばれるこの山は、山形県尾花沢の西にそびえている。車道と荒れた林道を走って登山口となるハリマ小屋から歩き始める。この山には周回できるコースがあって便利だ。小さな沢を渡ると、早速ブナ林に入る。ホオノキ、トチノキなども太い木が見られる。さらに登れば、ブナも太い木が現われて、カメラのシャッターが忙しい。途中には水場が現われて、最初の休みをとる。ここから大きく回りこんで尾根に上がる。尾根のブナはわい少化が始まる。そんなに苦労することなく、展望の山頂に到着した。

山頂からは南へ向かう縦走路をたどる。わい性化したブナを抜けると、ヤマユリなどの咲く尾根歩きとなった。標高は千b以下でも、花を楽しみながらの尾根歩きができる。コルから尾根を離れて急な下りに差しかかる。すぐにブナの森に入っていく。急斜面が終わるころの森は素晴らしい。水場が現われたので大休憩をとって、ブナの恵みの冷たい水をたらふく飲んだ。

コースタイム:小屋(1時間)翁山(40分)コル(30分)小屋


不老長寿の泉前のブナ林

65)奥羽山

 奥羽山脈の奥羽山。標高わずか766b。恐らく夏道はないと思われる。2月のある日、気楽にこの山を目指した。登山口はJR陸羽西線さかいだ駅。堺田と呼ばれるこの地は、宮城県と山形県の境にあり「分水嶺の駅」とあった。

 線路を越えて歩き出すと、暗い植林のスギ林に入る。これを抜けると、今度は植林のカラマツ林。太陽の光が届いて、スギ林よりは気持ちが晴れる。次第に急な登りになってきて、たまらず尾根に出る。尾根からは人家や線路や国道など展望が得られる。小さなコルからは急な尾根に取り付く。このところ雪が降らないので、固く凍った雪面をスキーで登高は苦労させられる。何とか30分で登り切ると、展望の雪の丘に出た。神室連峰や禿岳などが真白に広がる。周囲のブナも風格が出てくる。三角点のある山頂までは、さらに奥へと進むが、ブナはもっと太く見栄えのいい木が多くなる。三角点山頂の手前のブナの多くは、枯れてツルアジサイに囲まれていた。風の通り道で、枯れたのだろうか。

 広い山頂の一角に大きなブナの木があったので、そこで昼食をとるために腰を下ろしたら、ブナの木には「奥羽山」の手製の看板が掛けられていた。偶然に山頂に立ったようだ。この山に登る人はいないと思っていたら、山頂に今しがた登ったばかりのスキートレースがあって驚いた。風も少なく、じっくりと味わって山頂を後にした。

コースタイム:堺田駅(1時間30分)山頂(1時間)堺田駅


奥羽山山頂広場のブナ林


翁峠


奥羽山


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