東北ブナ紀行(31 奥田 博

青森・秋田・岩手県の東北北部を終えて東北南部に入ったはずだが、久し振りに青森・下北の山々を訪れ、見事なブナに出合えたので戻りたい。青森といえばアオモリヒバ(ヒノキアスナロ)が、山のどこにでも点在している。概ねブナと混交している場合が多いのだが、標高が低いせいか杉の人工林も目立った。

59)縫道石山

縫道石山に取り付いたのは、午後二時を回っていた。登山口には熊除け鈴の貸出箱が設置されており不安をかきたてる。登山口にはブナとアオモリヒバが並んで迎えている。今回の山旅を象徴する木々だ。ここは東北森林管理局青森分局によれば「佐井村字縫道石国有林2334林班」ということになる。登山道に入ると早速、太いブナが現れた。3人でやっと囲める太いブナも見られる。尾根に登り下りにつくと人工林となりブナは見られない。最低コルから再び登り、縫道石山の真下に来ると再び見事なブナが見られ、その間から岩山が覆い被さるようにそびえている。急坂に取り付き、やっとの思いで岩のテッペンに立てば陸奥湾や北海道が眺められた。豪快な山頂を楽しんだが、暗くなる前に登山口に着かないと、熊の餌食になってしまう!

コースタイム:登山口(30分)最低コル(40分)山頂(30分)コル(30分)登山口

縫道石山の3人囲みブナ

60)大尽山(おおづくし)

 霊場恐山の前に横たわる宇曾利山湖。その正面に端正な三角を湖面に映すのが大尽山だ。この一帯は森林生態系保護地域に指定された場所である。湖畔で準備をして歩き始める。ここから本格的な登山口までは湖畔を半周する水平道をたどる。周囲の花はすでに秋の花でアケボノソウ、ヤマトリカブト、林の中にはアケボノシュスランが咲いていた。遠くに恐山の建物が眺められる。

登山口から大尽沢に沿っての道に入ると、見事なブナとヒバの森が現れる。写真にしようとすると、どうしても明るいブナにカメラを向けてしまう。静かな森のたたずまいが広がる。一体地蔵と呼ばれる尾根までは太いブナが散見されたが、尾根にかかるとブナの樹径は細くなる。次第に笹薮が道を覆うようになると矮性化したブナに変わっていく。そして山頂に着く頃には雨になっていた。山頂からの展望も望めないまま、往路を戻った。

コースタイム:宇曾利山湖登山口(1時間)大尽沢登山口(1時間30分)一体地蔵尾根(40分)山頂(2時間30分)登山口


大尽山に広がるブナの森

61)黒森山

 朝飯前に登った420mの里山だった。北海道の見えるちぢり浜から少し入ると下北少年自然の家の駐車場となる。ここから歩き始める。最初はスギの植林の中を登るが、湿度が高く蒸し暑く汗を絞られる。やがて急斜面に取り付くと、植生は自然林となりミズナラ、トチノキ、ホオノキ、ハウチワカエデ、ブナなどの豊かな森だ。少年が歩けるようにコース道標もバッチリ。尾根に上がればブナの大木が目立つ。その先は、ヒバの森でこちらも大木が見られるが、とにかく暗い。やがて鳥居と祠の建つ森に囲まれた山頂となった。モーニング・コーヒーを点てるが、海が見えたらもっとおいしかっただろうに残念。

 途中の分岐まで戻り、急な下山道にかかる。こちらも見事なブナがたくさん現れて、嬉しくなる。標高400m以下にあるブナだ。海が近くて温暖なのだろう。観音堂を過ぎると尾根から急な下りが待っている。沢をいくつか越えて下れば登山口に戻っていった。朝飯前の山であったが、すっかり汗をかいてしまった。下風呂温泉で汗を流してから朝食にありついた。縫道石山では時間に追われ、大尽山では雨に追われ、黒森山は朝飯に追われた山旅だった。

コースタイム:下北少年自然の家(1時間10分)山頂(30分)観音堂(30分)下北少年自然の家

黒森山の大ブナ

 


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