東北ブナ紀行(26 奥田 博

今回でブナの山50山の紹介となるが、まだ青森・秋田・岩手県の北東北が終っていない。100山をメドにシリーズを終えたいと思っていた。2004年の特集で「福島のブナ50」(名前だけ)を取上げているので、既に100山を超えている勘定になる。中身は密度の濃淡もあるので、100山にこだわらない方がいいようだ。2000年から始まって7年で50山。あと7年で目標の100山。末永くお付き合いください。!!

先日、第1回で紹介した藤里町の岳岱のブナ林を訪れた。綺麗に整備され、公園を歩くようで、その変わり様には目を奪われた。ロープが張られ、立派なトイレや明らかに不要な多目的施設?が造られていた。そして樹齢400年といわれるマザーツリーは一部が倒れていたのが、この僅かに残された岳岱の象徴であった。

今回も白神山地のブナ山ですが、白神ブランドの観光資源として登場したのが、ブナ林の公園化である。残された僅かなブナ林を活かして、ブナを味わってもらおうとするもの。しかし、そこには問題点も垣間見える。

49)白神山地・留山(秋田県)

遠路、白神山地まで出かけて雨に降られると、停滞も勿体無い。そこで調べたら留山のブナがいいと、地元のパンフレットに書いてある。車道から近い場所でもあるので、国道101号から林道を奥に入った。途中の取付きには派手な看板が建っているが、林道の分岐などには何も道標がない。この周辺もスギ林が延々と続き、本当にブナ林はあるのか、不安になるくらいだった。間違って入った林道では「実験林」という表示の森があった。ミズナラやブナを中心とした明るい二次林で、丁度新緑が輝いていた。戻って、やっと探し当てた登山口には立派なトイレと看板が建っていた。留山とは江戸時代、この山を切ったら水田の水不足に陥り、この一帯の森は切らない約束をしたことに由来するとのこと。

林道を歩いて入口まで行くと「ガイド同行以外入山禁止」と入口をチェーンで歩行止めしてあった。この山は私有林ではなさそうだ。国有林であればせめて「なるべく地元ガイドと一緒にお入りください」くらいの提示にすべきだろう。一歩中に入ると、木道や橋などが整備されており、観光バスで来たスニーカー客でも歩ける。森は明るく、阿武隈などのブナに似て白いブナの幹だ。日本海が近く標高150mなので雪が少ないため、黒い苔は付いていないのだろう。中には200年ブナもあって見事。小鳥やモリアオガエルが鳴き、ブナの幹にはクマの爪痕がたくさん見られ、クマの糞までサービスされ自然度の高い公園?という印象。最近、コースが開かれたのであろうが、秋田側の観光資源としてのブナ利用戦略が見え隠れする場所であった。

コースタイム:登山口(45分)登山口

留山の大ブナに付いたクマの爪痕

50)白神山地・十二湖(青森県)

十二湖は昔からの観光地だが、最近は白神ブランドを使い「ブナ」を前面に出している。歩いていると、地元ガイドや添乗員に連れられて、ワンサカと観光客が列をなすのに出会う。「ブナ原生林」なる看板もあるが、感動を呼ぶほどのブナ林ではない。しかし奥に入るとカツラやトチ、ホオノキやミズナラなどを加えたブナ林が素晴らしいが、そこまで観光客は入ってこなかった。この場所でブナに目覚める人が一人でも生れるといいのだが。

コースタイム:ビジターセンター(1時間)糸畑ノ池(1時間)青池(40分)ビジターセンター


今年はブナの実豊作?


戻るブナ紀行目次へ