東北ブナ紀行(24 奥田 博

 八甲田山麓に広がるブナ林は有名である。どこをとっても二次林が多いが、とにかく粒が揃っている。急な登りもなく、ただただ森を楽しめる点は優れている。その中でも蔦温泉上部の道は、不明瞭な分、森を彷徨している気分が味わえる。しかし本当にさ迷うことのないように注意したい。

45南八甲田・松森
 八甲田山麓に広がるブナ林は有名である。どこをとっても二次林が多いが、とにかく粒が揃っている。急な登りもなく、ただただ森を楽しめる点は、優れている。
 蔦温泉の北側のバス停「仙人橋」から歩き出す。車道から急坂で始まるが、すぐに伸びやかなブナ林となる。森には人の手が入っているが、それでも母樹が適当に残っており、アクセントになっている。緩い登りの後、ブナに囲まれた赤沼に到着する。沼の向こうには赤倉岳の山容が、優しいラインを見せている。
 ここからは、奥の道は所々ヤブに覆われて、登山者は少ないように思える。道形はしっかりとしており、心配はない。しかし深い山に入った印象が強い。熊がいつ顔を出してもオカシクナイ。ブナなどの広葉樹林の中をたどるが、突然岩場が現れ、松が生えている小山にたどり着いた。ここが松森だった。展望も無く、静かな小ピークである。
 この先もブナの森は続く。大きなトチノキも見られる。道は緩い下り道になっていく。ブナの大木は時々現れるだけである。遊歩道のようなものが近くなるとイタヤカエデ、ミズナラ、サワグルミなども多く見られる。やがて長沼となり、水の流れが美しい。大きな蔦沼は、今までたどったコースに比べると観光客が多い。ゴールの蔦温泉までは近い。

コースタイム:仙人橋(1時間15分)赤沼(50分)松森(1時間30分)蔦沼(10分)蔦温泉


ブナに囲まれた赤沼

46)十和田山
 十和田湖の東側にそびえるブナの山。名前も十和田山。隣には十和利山もある。取り付きは民家の脇で、挨拶をして通る。その奥のバラ園を突っ切り小さな登山道標にしたがって森の中に入る。最初にサワグルミ、登りに差し掛かるとトチノキ、イタヤカエデ、ミズナラ、ヤマモミジ、ホオノキ、ハリギリそしてブナと多彩な森が続く。登ると、どんどんブナの大きな木が現れる。途中、登りが一服して緩やかな尾根になると、ブナは美しく輝いている。木々の間からは十和田湖が見えてもよさそうだが、意外に木々が邪魔をしてはっきりとは見えない。
 ブナが矮小化してくると、足元には笹が繁茂し、しかも道が深く掘られて、靴がやっと入るような登山道になる。その上、急坂で、ガードレールの中を歩いているようで苦しい。後方が開けて湖が見え出すと、イチイが現れる。すると間もなく山頂到着となった。山頂からは大展望が得られる。南八甲田を始め、十和利山、戸来岳などが間近に望まれる。子の口への登山道は未整備なそうで、往路を戻った。

コースタイム:宇樽部(2時間50分)山頂(2時間10分)宇樽部


ブナにツキヨタケ・十和田山


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