東北ブナ紀行(22 奥田 博

 岩手県には宮沢賢治ゆかりの山が多く点在する。今まで紹介した東北ブナ紀行でも、七時雨山や駒頭山、秋田駒、焼石・栗駒なども、そのグループである。今回紹介する方面森もそのひとつ。また今回のブナの山もまた、冬に訪れ、その夜は瀬川夫妻宅に泊り、翌日はカタクリの会の観察会に参加した、恒例のパターンであった。

41)方面森

方面森とは変わった名前である。「かたづらもり」と読む。この山は花巻在住の佐藤孝さんが、この山は賢治の作品に現れる「みみずく森」であると推論した山。さっそく、守る会のメンバーで訪れてみた。

川を渡って、神社を抜けて急な尾根に取り付く。尾根に上がっても急な登りは、主尾根まで続いた。主尾根は緩やかで、しかもトレースがあった。ブナを中心とした二次林の尾根をたどると、素晴らしいブナの森に差し掛かった。ここは尾根の東の台地にブナ林が広がっている。皆、思い思いにブナの森を堪能する。尾根に上がると、そのブナ林を見下ろすようになり、普段見慣れないブナの風景を味わった。見事な森は山頂まで続いた。狭い山頂で昼食をいただいて、ブナの森を滑り降りた。

コースタイム:尻平川(1時間)509m点尾根(30分)ブナ帯(30分)方面森(40分)尻平川



方面森 見事なブナに感動

42)高下岳

瀬川さんにコースを確かめて、取付きまで来る。高下岳の登山道のある尾根とは無縁の尾根に取り付く。高下岳から独標1066m点の尾根から東に大荒沢川へ降りる尾根は3本派生しているのが、地図で確かめられる。この中で真ん中の尾根をたどった。最初の時には吹雪であったので、翌々年再度登った時には、南の尾根から登っている。

川を渡って、急な尾根に取り付く。細い個所もあって苦労させられるが、尾根に出ると急ではあるがスキーでたどれる。次第に素晴らしいブナが散見されるようになる。さらに登るとブナは急に無くなって、主尾根に到着となった。主尾根は立派なブナ少なく、若いダケカンバや矮性化したブナで、ブナに関しては見るべき木々は少なかった。視界の無い山頂もそこそこに戻り、赤布を付けた枝尾根に入ると同時に雪崩が発生した。スローモーション映画を見るようにゆったりと雪崩は流れていったが、その上を越えてブナの森に入っていった。

コースタイム:大荒沢川(1時間30分)主尾根(1時間)高下岳(2時間)大荒沢川



高下岳・吹雪のブナ林



高下岳・雪の中にブナが息づく


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