東北ブナ紀行(21 奥田 博

 岩手県のブナはまとまっては存在しないが、広範囲に点在している。岩手県と秋田県の県境・奥羽山脈で最大の山塊は、八幡平・秋田駒山塊だろう。次に大きなのが真昼山地で、その最高峰は和賀岳である。その次の山塊は、焼石・栗駒の峰々へとつながっていく。真昼山地の岩手側には盟主である真昼岳、和賀岳、薬師岳、高下岳、女神山などブナの山々が連なる。まとまったブナも素晴らしいが、僅かに残されたブナもまた味わい深い。

39)峠山

僅かなブナの代表が今年1月に訪れた峠山のブナ。ブナ林として紹介するかどうかは微妙なくらい、小さな面積に残されたブナである。今後、送電線増設工事で伐採の憂き目に遭いそうなのだ。ヒョットすると、間もなく無くなってしまうかも知れないブナである。岩手在住の瀬川さんとの観察会の前日、瀬川さんの案内で訪れた。峠山までは林道をたどるが、その尾根に沿って送電線鉄塔が占拠していた。峠山から尾根を東に向かうが、周辺はブナを中心とした二次林。その幹には赤テープが張られている。送電線を架け替えするために、新たに工事をするために伐採されるという。こんな場所を工事する際にもアセスメントはするのだろうか?小ピークをいくつか越えると、200年ブナは立っていた。見事なブナはいくつか数えられたが、見渡した限りでは何本もない。変形したブナ、これから壮年期を迎えるブナ、それらは、いとおしいブナの一つひとつであった。

コースタイム:錦秋湖SA(1時間)峠山(30分)大ブナ(30分)峠山(40分)錦秋湖SA



峠山 雪に曲げられるブナ


峠山 味わい深いブナ

40)女神山

岩手在住の瀬川さんとの観察会で二度ほど訪れたが、それ以前にも何度か歩いたことがある。ブナばかりでなく、水をからめた見どころの多い山である。特に多くの滝は、目を楽しませてくれ、中には滝の裏側に入り込むこともできるなど実に変化に富んでいる。登山口までの長いダートロードが厳しいので、大型バスが入れないことも登山者の制限に役立っている。登山道は回遊して楽しむことができる。もちろん、滝巡りをしたり、霊泉を頂いたりしながら登ることだ。沢から離れると本格的なブナの森が始まる。すぐに分かるのは二次林であること。まだまだ若木の林であるが、揃ったリズム感は実に見事だ。時々、そのリズムを遮るような大きなブナもまた面白い。

コースタイム:登山口(1時間30分)女神山(2時間)降る滝(1時間)登山口


女神山 ブナの森から流れ出る白糸の滝


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