東北ブナ紀行(62 奥田 博

  山形県主導で「山形百山」を先月確定した。公募0と市町村推薦で選んだらしいが、選ばれた山には道の無い山も含まれている。市町村推薦の影?が窺える。山形県のブナはトップクラスであると思うが、ブナという視点で選んでも面白かったと思うのは私だけでしょうか?

89)小僧森 1407m

以前紹介した村山葉山の南端に聳えるのが小僧森。畑集落から周回コースを辿るルートは、ブナ満喫コースともいえる。
畑集落から車道を大円院跡まで歩き、登山道に入る。大円院跡には建物は残っていないが、杉林と並んで大ブナが一本、見事に立ち上がっている。時代を見て来た300年モノだ。
この先は、若いブナに囲まれた登山道をたどる。ユーモラスなうば様石像を越えると、急斜面となりブナの大木が混じる林となる。次第に明瞭な尾根歩きとなり、主稜線に出ると大ブナは姿を消す。山頂を往復して、畑への道を下ると、見事なブナ林に戻る。特に素晴らしいのは、標高1240mの広い台地のブナ林。雪の台地に粒揃いのブナ林が、一斉に萌え出したばかりの産毛を煌めかせる様は、圧巻だった。
コースタイム:畑(30分)大円院跡(4時間)小僧森(30分)台地(1時間10分)畑


ブナ台地から朝日連峰を望む

90)湯ノ沢岳 964m

月山の西側に対峙するように連なる湯ノ沢岳。ここから北に向かって三の俣山、母狩岳、そして金峯山へと長大なブナの尾根が連なる。湯ノ沢岳から南には奇峰摩耶山まで登山道の無いブナの尾根が連なっている。いわば隠れたブナ連峰の一端を歩く。
湯ノ沢岳への登りは、急峻なブナの尾根をたどる。奇形のブナが多いのは、人の手が入っている証拠だろうか。山頂を踏んだらブナの縦走路核心部が始まる。そこは聞きしに勝るブナの森だった。穏やかな尾根に寄り添うようにのびのびと、健やかにブナの森が連なっていた。吹く風は心地よく、時折森が抜けて月山などの山々を眺められるが、ブナの森歩きに終始する。後半は、ヤマボウシの白い花が目についた。最後のピークである母狩山から急な尾根を下るが、ここにも見事なブナが広がっていた。
こうしてブナ三昧の8時間に及ぶ縦走は鮮烈な印象だった。
コースタイム:登山口(3時間)湯ノ沢岳(1時間30分)三の俣山(1時間30分)母狩山(1時間40分)登山口


湯ノ沢岳から母狩山の縦走路の穏やかなブナの森


小僧森


湯ノ沢岳


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